野生の猫のこと 東日本大震災


荻窪に引っ越してきたばかりの頃、ものすごーい目つきの悪い野良猫がアパートの近くをうろうろしていて、体も大きくて妙な威厳があった為、嫁さんが「ボス」とあだ名をつけて呼んでいた。なんでボスなのかはわからなかったけど、ボスと言えばボスって感じの風貌の野良だった。

家の近くには首輪を付けた飼い半飼い猫たちもウロウロしていたので、その見た目の違いは愕然だった。

野生の猫と飼い猫。こうも目つきが異なるのか。るろうに剣心の、普段のおろおろ言ってる時の剣心と、キレた時の緋村抜刀斎くらい目つきが違う。
ちなみにこの剣心「殺さず」を貫いているはずが、キレるとすぐ殺すって言います。

このボスですが、全く人に懐こうとはせずに何年も近寄ってこないし、愛嬌のかけらもないので、全然かわいくないのですが、存在感が強すぎて以前から妙に気になっていた。そしていつも生傷が絶えず、いつもボロボロなのにふてぶてしくて、まったく不器用な奴だけどかっこいい存在でもあった。

2011年3月11日 東日本大震災が起きた当日、地震による被害は少なかったが、電車は完全にストップ。
電話も通じず、町中がパニックになっていた。会社から自宅の荻窪まで歩いて帰ってきたその日、少しボスのことが気になっていた。さすがにびびって震えてるんじゃないのかなぁって、想像すると可笑しかった。帰ったらキャットフードでもあげようかなぁって思って、コンビニに立ち寄ったけど、
パニックによる買占めで物がなかった。キャットフードですら買い占めるんだなぁ、しょうがねーなー、なんて思いながら帰宅した。

結局その日はボスは見つからなかった。

翌日の3/12からはまぁご存知の通り、とにかくめちゃくちゃだった。原発メルトダウン、津波の被害全貌、買占め、デマ情報、空き巣、計画停電etc
色々なことがいっぺんに起きて一人ひとりが不安に飲み込まれていく様子が手に取るようにわかった。

数週間たった頃、突然ボスが姿を現した。いつものように道路の真ん中(車は通らない道)にダラーって横になって寝てた。
こいつはここ数週間何をしてたのかなぁって思って眺めてたら、突然ムクって起き上がって目配せしてきた。

「よおっ。元気だったか」みたいな感じで一瞬こっちを見てから、またすぐ寝た。こぶしで語りあった長年のライバルと、数年後突然再会したような、
恥ずかしいような嬉しいようなってやつだ。

震災後7年たったけど、自分が思い出すのは案外こんな記憶だったりする。

今はすっかりボスのことを見かけなくなったので、さすがにどっかで野垂れ死んだかなぁって思うけど、またひょっこり久しぶりの再会があると嬉しい。

スポンサーリンク

あわせて読みたい